なぜ僕らは86(ハチロク)に憧れたのか
86レビン・トレノ
僕らが免許を取って間もない頃、
高校卒業して社会人になった友人や、
金持ちの息子、兄貴がいるやつ、など
いち早く車を手に入れる友達がいました。
中古車を買って、彼女を乗せて海までドライブ、なんてことに
憧れていました。
しかしながら、そんな「ナンパ」なことには目もくれず、
ロールバーを組んだ86レビンなんかで山を攻めることに
情熱を燃やす友達なんかもいました。
この86レビン、86トレノが、ある種かっこよかったのです。
これです、これ。
ツートンカラーの通称ハチロク。
要するに「走り屋」が好む車種で、86トレノも人気がありました。
この車をどこかの中古車屋や、先輩に譲ってもらったりして
中のシートをひっぺがし、エアコンもカーステも全部はずして
軽量化し、山へ向かう友人がいました。
のちのち、漫画「頭文字D」の影響もあり、
この86(ハチロク)シリーズは人気車になるのですが
僕らの頃はまだ関係ありませんでした。
私も何度か、その走り屋の友人に
初心者マークをつけた86(ハチロク)で山に連れて行ってもらったものです。
エアコンもカーステも後部座席もなくレカロシートとロールバーだけの車内。
何度もエンストしながら、ようやく辿り着いた夜明け前の街を見下ろしながら
甘い缶コーヒーとセブンスターは少し大人の味がしました。
今ではすっかり見かけることもなくなった86レビン、トレノ。
決してナンパな車ではない86(ハチロク)。
当時、まだ子供だった僕らは、何かに媚びたくなかったのか?
ナンパに? 女の子に? 社会に?
今ではそのすべてに媚びてしまっていて、
なぜ僕らが86(ハチロク)に憧れたのか、
その原因は、あの山の上に置いてきてしまったようです。