村上春樹を読破した私が「村上春樹初心者」におすすめする、とっておきの5冊
村上春樹の最新作が2017年2月24日に発売される。
「騎士団長殺し」だそうだ。
今までなら予約してでも手にしていたが
今回は・・・。
タイトルは「騎士団長殺し」
これもまたベストセラーになるであろう。
そこで、新刊もいいが旧作はどうなのだろう。
初心者におすすめの村上春樹の小説
私は村上春樹の小説は全部読んでいる。
何かと取っつきにくい印象のある村上春樹の小説だが
読んでみると、その独特の村上ワールドに引きずり込まれて、
どんどんページがすすむ。
また一回読んだくらいでは理解できないことも多く、
何度も読み返すことになる。
そして読み返すと、新たな発見があったり、
見方が一変したり、多くの気付きがある。
そんな風に、村上春樹の小説を何度も読み返した私が
「村上春樹初心者」におすすめする作品をランキング形式で紹介する。
第1位 羊をめぐる冒険
1通の手紙から羊をめぐる冒険が始まった 消印は1978年5月――北海道発
あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。
その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21歳の女性が新しいガール・フレンドとなった。
北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。
新しい文学の扉をひらいた村上春樹の代表作長編。
「僕と鼠」シリーズの第三作。
特にこの「羊をめぐる冒険」は秀逸だ。
典型的な村上ワールドの中で僕と鼠が生々しく存在する。
果たして「僕」にとっての「鼠」とは・・・。
村上春樹が意図するものとは・・・。
「羊をめぐる冒険」から読み始めてもいいのだが、
せっかくなら三部作になっている
第一作「風の歌を聴け」(後述)
第二作「1973年のピンボール」
から読んだほうが壮大な物語のスケール感が味わえる。
もちろん「羊をめぐる冒険」から読み始めても物語は理解できる。
「羊を・・」を読んだ後「風の歌・・」「1973年・・」と読むのもおもしろい。
「俺は俺の弱さが好きなんだよ。苦しさやつらさも好きだ。
夏の光や風の匂いや蝉の声や、そんなものが好きなんだ。
どうしようもなく好きなんだ。君と飲むビールや……」
※「羊をめぐる冒険」(下)より
第2位 海辺のカフカ
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」
――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。
家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。
古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。
小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。
「海辺のカフカ」この本を手にした私はほぼノンストップで読了した。
一気に物語に引き込む筆力。深まる謎。衝撃の展開。そしてナカタさん。
二つのストーリーが複雑に絡まり、交差する。
割と入りやすい話だが読み込むとともに深さを増していく。
「私があなたに求めていることはたったひとつ」
「あなたには私のことを覚えていてほしいの。あなたさえ私のことを覚えていてくれれば、ほかのすべての人に忘れられたってかまわない」※「海辺のカフカ」(下)より
第3位 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。
老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。
静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
過去の村上作品とは一線を画す作品。
比較的取っつきやすく、読みやすい。
世界の終わりの物語とハードボイルドワンダーランドの物語が
どう交わっていくのか・・・。
そして予想に反する衝撃のエンディング。
読後もしばし考えさせられた作品。
冒険タッチのストーリー展開なのでどんどん読み進めます。
誰も私を助けてはくれなかった。
誰にも私を救うことはできないのだ。
ちょうど私が誰をも救うことができなかったのと同じように。
※「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(下)より
第4位 風の歌を聴け
「あらゆるものは通り過ぎる。誰にもそれを捉えることはできない。僕たちはそんな風に生きている」1970年8月、帰省した海辺の街。
大学生の〈僕〉は、行きつけのバーで地元の友人〈鼠〉と語り明かし、女の子と知り合い、そして夏の終わりを迎える。
過ぎ去りつつある青春の残照を鋭敏にとらえ群像新人賞を受賞した、村上春樹のデビュー作にして「初期三部作」第一作。
村上春樹のデビュー作。
普通の小説とはちょっと違う独特の文体。
短いセンテンスでリズミカルなストーリ展開。
一度目の読後感は「?」。
二度、三度と読み返すうちに、だんだんと少しずつ、
いろんな「感」が滲み出てくる。
この作品は何度も読み返したい小説である。
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」
※「風の歌を聴け」より
第5位 ねじまき鳥クロニクル
「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。
「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。
「質問はしないで」と彼女は言った。
「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。
三巻に及ぶ長編小説。
究極の村上ワールドの仕上がり。
言葉のセンス、情景が浮かんでくるストーリー展開、
しかし少しでも気を抜くと置いてきぼりにされる村上ワールド。
この作品は村上ワールドの完成型とも言える。
「笠原メイ」とは「妻・久美子」は、そして「井戸」の意味するものは・・・。
僕は逃げられないし、逃げるべきではないのだ。
それが僕の得た結論だった。
たとえどこに行ったところで、それは必ず僕を追いかけてくるだろう。
どこまでも。
※「ねじまき鳥クロニクル」第二部より
まとめ
これらはもちろん私独自の感想です。
他にも名作「ノルウェイの森」や「1Q84」などもあると思いますが
村上作品は初期のものほどいいと感じる。
粗削りであり挑戦的である。
最近の村上作品ももちろん読んだが、
感想は「村上春樹も老けたな」という印象だった。
器用になったのか、迎合しているのか、なんせ古臭い。
やはり初期の作品にある、溢れんばかり「みずみずしさ」が
村上作品の醍醐味であると私は考える。
しかしながら、読むべきこちらも村上作品に触れすぎて
「頭でっかち」になっているのかもしれない。
彼の作品は「Don't think ! Feel.」(考えるな!感じろ)