オッサンライフ

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あの日の野球少年

Number 甲子園ベストセレクションI 9人の怪物を巡る物語

あの夏の日、僕らは汗まみれで白球を追った。

手のひらのマメがつぶれてもバットを振った。

ただ、あいつらみたいになりたくて。

 

ただ白球を追いかけて

僕ら野球少年にとって

彼は「完全無欠のヒーロー」だった。

歳も、それほどはなれているわけでもなく

けれど、絶対に手の届かない存在だった。

彼、そして彼らは憧れを超えたヒーローだった。

 

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2012年 8/30号 [雑誌]

 

天才打者と天才投手。

一年生で四番とエース。

簡単にレフトスタンドに持っていくホームラン

精密機械のようなコントロール。

当時は無敵と思われた、徳島・池田高校。

蔦監督率いる「やまびこ打線」に

阿波の金太郎こと水野選手。

江上選手に畠山選手の強力打線をもってしても

PL学園・エース桑田の前にはかなわなかった。

そして、彼はその中心にいた。

 

それから、彼は歳をとった。

僕らも歳をとった。

 

彼はエラーをした。

ひとつのエラーが

試合をぶち壊しにすることも知っているだろう。

ひとつのエラーが

負けにつながることも知っているだろう。

おそらく、もう取り返しはつかないだろう。

 

僕らの「ヒーロー」は消えた。

しかし、彼を「ヒーロー」だと信じる者が

少なくとも二人はいることだろう。

 

僕らは教わった。

「エラーをしないためには練習を重ねることだ」と。

彼は「あの日の野球少年」のように練習するしかない。

そして、あの日に戻らなければならない。

 

▼野球の思い出