魚肉ソーセージではないのだ、「ポールウインナー」なのだ。
僕らがまだ小さい頃から
冷蔵庫の片隅にいた「ポールウインナー」。
時におやつに。
時に料理の具材に。
時に父親のおつまみに。
僕らをいつも満たしてくれた。
それが「ポールウインナー」なのだ。
「ポールウインナー」
「これは魚肉ソーセージ!」
「え、何がちがうの?」
「ぜんぜんちが~う!(怒)」
「いっしょじゃん!(激怒)」
そんな諍いを何度も繰り返した。
関東出身の彼女たちはいつもそうだった。
ほとんど関西でしか流通していない「ポールウインナー」
これはいわゆるソウルフードで
僕らを育てたという一役を担っていたのだ。
それを安価な魚の肉のソーセージなんかと一緒にされたくない。
そう、「ポールウインナー」は高級品なのだ。
オレンジなあいつ
オレンジのセロハンにくるまれたあいつは
いつも僕らを魅了した。
特に昔のあいつには、頭と尻に金具のストッパーが付いていた。
僕らはそれを歯で噛み千切って、セロハンをむしり取る。
半分まで食べたら、尻から押し出す。
最後はうまくいかずセロハン内に残ったウインナーの肉片を
ねぶり食す。
そうやって僕らは大きくなってきたのだ。
あれからずいぶん経った。
あいかわらず、今も食べる。
関西のスーパーには必ず置いてあるし、
もちろん冷蔵庫のサイドポケットの一部はオレンジ色だ。
僕らを取り巻く環境はたくさん変わっていった。
しかし、オレンジなあいつは今も僕らを魅了している。
時におやつに。
時に料理の具材に。
時におつまみに。