おまけでもらった「サッカーボール消しゴム」
文房具屋が好きだった。
用もないのに文房具屋によく行った。
お気に入りは消しゴムだった。
鉛筆をケースで買うと貰えた消しゴム。
当時はこれが宝物だった。
三菱鉛筆のおまけ
小学校の校門の前に小さな文房具屋があった。
僕らはお金も持っていなくて
ただ文房具屋に入っては消しゴムやシャーペンなんかを見る。
文房具屋のおばちゃん(店主)も慣れたもので
僕らになんか目もくれず、備え付けの小さいテレビで
「3時のあなた」なんかを見ながら煎餅をかじっていた。
新学年や新学期にはいくつかの文房具が買ってもらえた。
三菱の鉛筆には毎年おまけがついていた。
サッカーボール消しゴムは分解できるものだった。
当時はサッカーより野球の人気ほうが圧倒的に高かったのだが
この珍しいサッカーボール消しゴムはみんな欲しがっていた。
消しゴムの役割はまったく果たせないものだったが
みんな無理やりにでも鉛筆を買ってこの消しゴムを手に入れた。
なんで、あんなものが欲しかったのだろう?
分解できたからなのか、希少性があったからなのか。
今となってはもうわからない。
ただ僕らの記憶の片隅にあのサッカーボールは転がっている。